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地域とつながる学びの最前線 清流館高校でのプレゼンテーションから見えた「探究学習」の新たな可能性


2025年3月19日、静岡県立清流館高等学校にて、岩本武範准教授による特別プレゼンテーションが行われました。発表のテーマは「探究学習の構造とその影響——学びの活用と進路形成の視点から」。これは、清流館高校と地域住民を対象に実施した大規模なアンケート調査に基づく研究成果を、教職員の皆さんに直接届ける機会として実現したものです。

本調査は、静岡県教育委員会の取組みである「行きたい学校づくり」のプロジェクトが起点となっているものです。「総合的な学習(探究)の時間」の推進を行う高等学校での取組みをより精度の高い学びとするべく、岩本武範准教授の研究室が受託したものとなります。

アンケート調査は、清流館高校の普通科・福祉科の全校生徒、さらに近隣5市2町に住む地域就業者を対象に行われました。生徒には探究学習の印象や達成感、進路形成との関連について質問し、地域住民には「清流館にどんな期待を抱いているか」を尋ねる内容でした。調査設計には、現場の先生方との綿密なやりとりを重ね、教育現場のリアリティと研究の厳密性を両立させる工夫が凝らされました。

■生徒の「探究心」と「共創心」を可視化する

■生徒の「探究心」と「共創心」を可視化する
プレゼンテーションでは、探究学習における生徒の意識構造を「探究心」と「共創心」という2つの因子で捉え、それらが達成感・進路意識・学びの活用にどう結びついているかを構造方程式モデリングという手法で可視化した結果が紹介されました。分析からは、学年が進むにつれて「社会や進路と自分を結びつける力」が高まっていくプロセスが明らかになり、これは探究学習の本質を捉える重要な知見です。
また、自由記述を通しては「難しさ」や「戸惑い」の声も明らかにされ、「自分の考えがまとまらない」「テーマの選び方に迷う」といった悩みも浮かび上がりました。しかし同時に、「誰かと話しながら整理できた」「チームで発表して自信がついた」といったポジティブな言葉も多く、生徒たちが葛藤の中で学びを深めている姿が垣間見えました。

■地域からの期待は「人づくり」へ

一方、地域住民からの調査では、「地域で活躍できる人材の育成」への期待が圧倒的に多く、教育の現場と地域社会との接点がますます重要になっていることが示唆されました。「地域と関わる生徒が多い」「卒業生が地域で働いている」という声もあり、清流館高校が“地域の核”として機能していることが浮き彫りになりました。
岩本准教授は、「生徒が真剣に地域課題に向き合っている姿に触れ、教育が社会にどれほどポジティブな影響を与えうるかを再確認しました」と語りました。

■「ASOBI」の可能性——意思決定とウェルビーイングへ

今回の研究では、探究学習の中で生まれる「柔軟で創造的な意思決定」(ASOBI)の重要性にも言及がありました。ASOBIとは、唯一の正解ではなく、多様な選択肢から“納得解”を導く力(岩本准教授提唱)。そのような力が、今後の社会で求められる「正解のない問題」に立ち向かう力につながっていく——そんな示唆に満ちた内容に、教職員も大きく頷いていました。
プレゼン後には、質問やコメントが寄せられ、「自分たちの学びが社会につながっていると実感した」「地域の人が自分たちに期待してくれていることが嬉しかった」といった感想が多く聞かれました。


この取り組みは、単なる研究発表ではなく、教育・研究・地域が三位一体となった新たな共創のかたちです。清流館高校の生徒たちが地域に出ていくとき、その背中を支えるのは、まさにこのような「学びのリアル」なのかもしれません。本研究は、まだまだ続きます。