成長と分配の好循環をどうつくる? ―非上場株市場の活性化がカギでは—
※職位や内容は投稿時のものです。
岸田政権が発足し、新しい資本主義の起動に向けて、成長と分配の好循環を促す経済対策が本格化しています。筆者なりに、「こんな考え方が大切になるのでは・・・」といった「つぶやき」をこのエッセイで書かせて頂くことにします。
コロナのダメージが続いていることからすると、「分配」を重視することになるでしょう。経済的困窮者への現金支給など、予算措置が必要となることは当然で、その際には「格差是正」という視点も重要になると思います。数年前、トマ・ピケティ氏が提唱した「r>g」(資本収益率が経済成長率を上回る)といった主張は、分配の在り方や方策を考えるに際して一定程度の示唆があると言えます。ただ、「r」への増税などの措置は、「資本」側のマインドを押し下げ、「成長」にプラスに働かないといった兆候も現れ、成長と分配の好循環つくりは、非常に難しいと思います。
加えて、日本の経済構造や特質も視野に入れなくてはなりません。ここが問題で、賃金上昇が進まない、インフレが起きないなど、構造的問題がありますが、「2025 年の崖」問題のように、ブラックボックス化したレガシーシステムが足枷となり、グローバル競争力が低下して、成長が滞ってしまう構造こそ最大のネックと考えます。従って、ここを克服する成長戦略が重要となります。
「じゃ、どう実現する?」ということになるわけですが、岸田政権の賃金上昇策は理にかなっています。賃金を上昇させ、「需要側のパイの拡大」を図ることは成長の原動力となるでしょう。ただ、より重要な視点は、「グローバルな競争力」と「供給側のパイの拡大」をどうつくりだすかにあります。科学技術基盤の強化、イノベーション、デジタル化の推進など、いろいろ考えられますが、とりわけ筆者が重視しているのは、スタートアップ支援です。新しいビジネスの担い手と次世代を担う技術・ビジョンを持ち合わせた若いスタートアップ企業による競争力と供給力の拡大を成長の推進力と位置付けることが重要と思うわけです。
IPOや上場後のケアも大切ですが、アーリー段階からの育成と仕組みつくりがより重要です。コロナ禍にあっても2021年の日本のIPOは、130社を超える勢いで増加しています。ユニコーン企業はまだ少ないですが、海外投資家からの投資もかなり増えており、成長の土壌は備わりつつあります。今年6月、日本証券業協会(日証協)が「非上場株式の発行・流通市場の活性化に関する検討懇談会」報告書を公表したのですが、その第一に「新たな特定投資家私募制度(日本版レギュレーションD)の整備」が掲げられています。
これまで非上場段階での投資は、流動性が低く開示情報も少ないため投資家保護の観点から規制されていました。アーリーステージへの成長マネーが閉ざされていたわけです。そこを緩和し、いわゆるプロの投資家など特定投資家に開放するといった「特定投資家私募制度(日本版レギュレーションD)」が進められているのです。非上場株式の国際化なども検討されており、アーリーステージ段階から、海外投資家、エンジェル、VCなどによるマネーの流入と支援ができるよう改革が進められています。
こうした海外マネーを巻き込んだスタートアップ企業を軸とする仕組みつくりこそ、成長と分配の好循環の「成長」側の要諦であると考える次第です。領域としては、DX関連、ヘルスケア関連、自動運転など、できれば最先端領域が狙い目ではないでしょうか。「特定投資家私募制度(日本版レギュレーションD)」、ご興味が沸くようでしたらリサーチしてみて下さい。
コロナのダメージが続いていることからすると、「分配」を重視することになるでしょう。経済的困窮者への現金支給など、予算措置が必要となることは当然で、その際には「格差是正」という視点も重要になると思います。数年前、トマ・ピケティ氏が提唱した「r>g」(資本収益率が経済成長率を上回る)といった主張は、分配の在り方や方策を考えるに際して一定程度の示唆があると言えます。ただ、「r」への増税などの措置は、「資本」側のマインドを押し下げ、「成長」にプラスに働かないといった兆候も現れ、成長と分配の好循環つくりは、非常に難しいと思います。
加えて、日本の経済構造や特質も視野に入れなくてはなりません。ここが問題で、賃金上昇が進まない、インフレが起きないなど、構造的問題がありますが、「2025 年の崖」問題のように、ブラックボックス化したレガシーシステムが足枷となり、グローバル競争力が低下して、成長が滞ってしまう構造こそ最大のネックと考えます。従って、ここを克服する成長戦略が重要となります。
「じゃ、どう実現する?」ということになるわけですが、岸田政権の賃金上昇策は理にかなっています。賃金を上昇させ、「需要側のパイの拡大」を図ることは成長の原動力となるでしょう。ただ、より重要な視点は、「グローバルな競争力」と「供給側のパイの拡大」をどうつくりだすかにあります。科学技術基盤の強化、イノベーション、デジタル化の推進など、いろいろ考えられますが、とりわけ筆者が重視しているのは、スタートアップ支援です。新しいビジネスの担い手と次世代を担う技術・ビジョンを持ち合わせた若いスタートアップ企業による競争力と供給力の拡大を成長の推進力と位置付けることが重要と思うわけです。
IPOや上場後のケアも大切ですが、アーリー段階からの育成と仕組みつくりがより重要です。コロナ禍にあっても2021年の日本のIPOは、130社を超える勢いで増加しています。ユニコーン企業はまだ少ないですが、海外投資家からの投資もかなり増えており、成長の土壌は備わりつつあります。今年6月、日本証券業協会(日証協)が「非上場株式の発行・流通市場の活性化に関する検討懇談会」報告書を公表したのですが、その第一に「新たな特定投資家私募制度(日本版レギュレーションD)の整備」が掲げられています。
これまで非上場段階での投資は、流動性が低く開示情報も少ないため投資家保護の観点から規制されていました。アーリーステージへの成長マネーが閉ざされていたわけです。そこを緩和し、いわゆるプロの投資家など特定投資家に開放するといった「特定投資家私募制度(日本版レギュレーションD)」が進められているのです。非上場株式の国際化なども検討されており、アーリーステージ段階から、海外投資家、エンジェル、VCなどによるマネーの流入と支援ができるよう改革が進められています。
こうした海外マネーを巻き込んだスタートアップ企業を軸とする仕組みつくりこそ、成長と分配の好循環の「成長」側の要諦であると考える次第です。領域としては、DX関連、ヘルスケア関連、自動運転など、できれば最先端領域が狙い目ではないでしょうか。「特定投資家私募制度(日本版レギュレーションD)」、ご興味が沸くようでしたらリサーチしてみて下さい。
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