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日本は「48」都道府県?


※職位や内容は投稿時のものです

2023年7月14日更新

 日本には、いくつの都道府県がありますか。北には北海道、青森県が、南には鹿児島県、沖縄県があり、「47」都道府県ですね。

 各都道府県は県内総生産(GDP)を算出し、経済規模や産業構造を捉えています。2019年度、静岡県のGDPは全国第10位1。自動車やその部品、食料品、電気機械、医療機器など製造業の規模が大きいことが特徴です。

 各都道府県は、内閣府が国連の基準に基づき整備する標準方式を参考に、GDPを推計します。この標準方式は2022年2月に改定され2、日本には「48番目」の地域(部門)があると想定されることになりました3。さて、「48番目」は何だと思いますか?


①宇宙空間   ②中央政府   ③全国値と47都道府県計の差



 答は②です。その理由を以下に整理しましょう。

 中央政府は、各省庁を東京都の霞が関などに置くとともに、税務署や税関など国出先機関を各都道府県に置きます。

 全国を対象とするGDP統計(これを「国民経済計算」といいます)は、各省庁や国出先機関の活動を図1のように表します。まず「各省庁や国出先機関」が労働力などにより、外交や防衛など行政サービスを生産します。次に、「中央政府」がそれを消費、国民に便益を与えます。「各省庁や国出先機関」が行政サービスを生産し、「中央政府」がそれを消費、というように、二段構えになっているところが特徴的ですね。

図1 国民経済計算の仕組み

(出所)筆者作成。


 一方、全国を各都道府県に分け、各都道府県を対象とするGDP統計(これを「県民経済計算」といいます)を作成するときには、工夫が少し必要です。

 まず、各省庁や国出先機関を、それらが所在する都道府県に位置づけます。これは、特に問題ありません。一方、「中央政府をどの都道府県に位置づけるか」で迷います。中央政府が提供する行政サービスは、各省庁や国出先機関が所在する都道府県向けでなく、全国向けだからです。例えば、外務省は東京都に所在しますが、東京都だけが外交の便益を受けるわけではありませんね。外交の便益は、静岡県など全国に及んでいます。また、各省庁が所在する東京都が、国債に付随する利子の負担を負っているわけでもありません。

 国連の基準は、このように各地域に分割できない組織を「全国単位」と呼び、それを「準地域」という仮想の場所に置きます。図2のように、各省庁や国出先機関が作る行政サービスは各都道府県から「準地域」に置かれた中央政府に渡され、中央政府がそこでそれを消費、全国にあまねく行政サービスを提供します。また、国債に伴う利子は、準地域に所在する中央政府から各都道府県に支払われます。


図2 県民経済計算の仕組み

(出所)筆者作成。



 県民経済計算に関する研究会は上記の事項を検討し、2022年2月改定の標準方式から、中央政府を準地域に位置づけることにしました。

 GDP統計は「データを単に集めれば完成!」ではありません。経済構造を的確に把握できるよう、体系化されています。また、地域統計は「全国統計のミニチュア!」ではありません。それは、地域統計固有の課題に対応できるよう、工夫・設計されています。
以上



  1. (出所)内閣府経済社会総合研究所(2023)「県民経済計算(平成23年度-令和元年度)(2008SNA、平成27年基準計数) 経済活動別県内総生産(名目)」(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/tables/2019/syuyo1.xlsx、2023年6月28日アクセス)
  2. (出所)内閣府経済社会総合研究所(2022)「県民経済計算標準方式(2015年(平成27年)基準版)」(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/pdf/hyojun2015.pdf、2023年6月28日アクセス)
  3. 本稿はエッセイのため、「正確さ」よりも「分かりやすさ」を優先しています。正確な内容については、以下などをご覧ください。
    内閣府経済社会総合研究所(2022)「県民経済計算推計方法ガイドライン(2015年(平成27年)基準版)」序-10~序-22ページ(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kenmin/files/contents/pdf/guideline/guide_220204.pdf、2023年6月28日アクセス)