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スイーツ!


講師 山田悟史(スポーツコーチング、水泳、バイオメカニクス)

 私は大の甘党です。最近ではスイーツ男子という言葉もあるようですが、年齢的にスイーツおじさんと言うべきでしょうか。昨年磐田に引っ越し、感動したのが「生クリーム大福」です。有名なのでご存じの方も多いと思いますが、森町にある「あさおか」の生クリーム大福、あれは絶品ですね。実は抹茶のスイーツはあまり好きではないのですが、初めて抹茶味のスイーツでおいしい!と思いました。あまりの感動に遠方にいる友人たちに、宅配で送りつけてしまいました。森町にはその他にも穴場的なおいしい生クリーム大福を出すお店もありますが、これは秘密にしておきます。

 最近はコンビニスイーツも優秀ですね。昨年はモンドセレクション金賞を受賞したローソンの「プレミアムロールケーキ」にはまってしまい、毎朝研究室のデスクで朝のおめざとして食べていました。クリームもスポンジも軟らかく、かまなくても口の中でとろけます。特に生クリームのおいしさは素晴らしいと思います。そしてクリームとスポンジを一緒に食べる事によってクリームのおいしさが際立ってそのバランスもいいですね。

 先ほど「かまなくても口の中でとろける」と書きましたが、テレビでグルメ番組などを見ていると、タレントが料理や肉などを食べた後に「軟らか~い」「噛まなくて良い!」「口の中でとろけてなくなっちゃう!」などとコメントするのが目立ちます。「軟らかくてとろける」=「おいしい」という風潮があるのでしょうか。事実、硬いものはあまり好まれないようで、噛む事が少なくなった若者は下あごが発達していないために、麺をすすれなくなっているそうです。これが進むと流動食しか食べられない人も出てきたりしそうですが、それは少し言いすぎでしょうか。

 「噛まなくて良いもの」が好まれる風潮は食べ物だけにとどまらない気がします。テレビで政治などに対して「説明不足だ!」というコメントを聞いていると、中には「普通の生活の中で、自然に耳に入ってきて、考えなくてもすぐにわかるような説明をしてくれないからダメだ」とでも言いたげなものもあります。つまり情報に関しては「噛まなくて良いもの」が好まれているというレベルを超え、「噛まなくても良いもの」じゃなければダメだという事になりつつある気がします。

 スポーツの指導においても同様な傾向が見られます。指導者は、あれをやれ、こうやれと、いちいち丁寧に指示を出します。選手や保護者も、手っ取り早く上達する方法を求めます。運動会で人気の「足が速くなる靴」も、それを与えれば子供は早く走れるようになるかも知れませんが、何かが成長したわけではありません。このような選手や生徒のニーズに合わせすぎた至れり尽くせりの指導では、技能や体力が上達するだけで、自分で考える力や自ら行動する力など大切な能力が向上しないのではないでしょうか。それは、ツバメの子を大きくするために、いつまでたっても親ツバメがエサを運び続けるようなもので、やはり自分で努力してエサを取りに行く力を身につけなければなりません。

 スポーツを通し、自分で考え、自分で行動できる能力を身につけさせようと思えば、指導者自身が自分で考え、自分で行動する力を身につけなければなりません。ただ指導の内容、方法を知っているだけではダメなのです。私はその能力の獲得が大化けの一要素だと信じています。学生には、他人に期待するのではなく、自分に期待し、その期待に応えるべく行動をして欲しいと思います。他人に期待している間は、ただ口を開けてエサを待つツバメの子と同じです。自らエサを取りに行く力を身につけましょう。

 ネットの世界では皮肉として「スイーツ」という言葉が使われています。その意味の一つに、「情報を鵜呑みにするメディアに踊らされている」というのがあります。つまり自分で考えず、与えられた情報を鵜呑みにする人を皮肉って「スイーツ」と言うわけです。そしてそういう思考を「スイーツ脳」と言うそうです。スイーツがいくら好きでも「スイーツ脳」にならないように気をつけましょう。私も気をつけます。