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「日本」が学べる「日本の文学」


准教授 谷口 正昭(日本語教育、国語教育)

 谷口ゼミのメンバーは、そのほとんどが中国、ベトナム、ミャンマー、インドネシアなどから来た留学生です。
ゼミの目標は「日本語力の向上および異文化の理解」で、毎週、様々な文学作品を精読しています。魅力ある小説などの読解を通して日本語力を高めてもらい、それと同時に日本人のものの見方や考え方、生活習慣や日本の文化を理解してもらいます。読み進める小説は年によって異なりますが、現代の若手作家の恋愛小説から川端康成、夏目漱石などの名作まで、美しい日本語で書かれた、私たちの心に深く迫ってくるような作品を選ぶように心がけています。

 なぜ私が、ゼミで文学作品の読解などということを始めたかというと、それにはきっかけがあります。ある日本語が堪能な外国人が、こんなことを言っているのを聞いたことがありました。「私は、日本の小説を読んで初めて、日本人のものの考え方、感じ方が分かるようになりました。それまでよく分からなかった日本人の心の中が、小説を読むことで本当によく分かるようになったんです。小説に描かれている日本人の生活スタイルや行動パターンも、日本人を理解する上でとても参考になりました。」

 なるほど、小説には、評論文などと違って現実描写のほかに人物の心情描写が、多くあります。詳しい内面描写があるから、ああ、この人はこの時はこのように感じて行動しているんだとか、この人はこんなことを考えながら生きているんだとか、そういうことが読者にはっきりと分かるようになっています。

 日本人は自分の気持ちをはっきり言わないので、何を考えているか分からないという定評がありますが、登場人物が心の中で考えていることが逐一説明されている小説は、外国人学習者にとって、日本人理解の素晴らしいテキストになる、ということなのでしょう。

 読んでいる途中で、おかしくて笑ってしまったり、疑問や怒りを感じたり、ちょっとしんみりさせられたり、思わず泣きそうになったり……。翻訳されたものを読んでいるわけではないので、それはまさに原語で文学作品を読んで、心が動かされているということになります。そういう体験を重ねていくことは、苦しみながら外国語を学んでいる学生たちにとって、きっと深い喜びになるに違いありません。
そんなことを考えながら、私のゼミでは、ずっと「日本文学の精読」をしています。

 後期は、この文学作品の精読と並行して、留学生として日本で生活していて疑問に感じていることなどをテーマに、各自、調査、研究を行います。そして、その成果をある程度の長さを持ったレポートにまとめ、「ゼミ発表会」で発表を行います。これまで、先輩たちが扱ってきたテーマは、以下のようなものです。
  • 「高木直子『上京はしたけれど』日中バージョンにおける表現の比較」
  • 「中国と日本の食文化の比較」
  • 「『留学生とアルバイト』に関するアンケート調査から」
  • 「日本と中国の建物比較」
  • 「インドネシアと日本の『結婚祝い』について」
  • 「日中酒文化の比較」
  • 「交通ルールに関する日中国民の意識差から見えたこと」
  • 「日本の職場における『いじめ』」
  • 「宮崎駿のアニメから探った中国のアニメの発展の道」
  • 「インドネシア人と日本人のあいさつと命名」
  • 「ベトナムの結婚式」
 この中には、ゼミで扱ったテーマをそのまま研究テーマにして、大学院の修士課程に進学した先輩もいます。