若者の意識と行動を探る
教授 田畑 和彦(人事管理論、経営管理論)
今、自分の研究を脇に置き、若者の意識と行動について調べている。研究を脇に置くと言っても、人事管理論を教える身故に、全く無関係というわけではない。管理の対象としての対象把握は必要だからである。
さて、今の若者を調べて、面白いなぁと思ったことは、日本の将来に希望を持てず、不安視するものの、またそれに重ね合わせるかのように、自分の将来を不安視しているが、それでも、7割の若者は「現在の生活」には満足しているということである。詳細な説明はここでは省くが、「好きな家族や恋人、友人がいるから」ということであった。その他世代と比べても、また団塊の世代が若者であった時と比べても、現在の生活に満足している若者の割合は高い。その将来を憂うも、身近な人との付き合い、いうなれば「つながり実感」が現在の若者にとっての最大の満足要因となりえている。
しかも、そうしたつながり実感を抱けている若者は、将来に対しても高い希望を抱けていた。若者の人間関係の希薄化が叫ばれて久しいが、それとは異なる状況が手元のデータからは見られる。親友の数でも、かつてのそれと何ら変わることなく、ただ情報機器の発達により、付き合い方が変わっただけである。むしろそれら機器は対面とは異なり、自己開示を容易にするものだけに今の若者はもっと深いところで繋がっているかもしれない。
日本の若者を国際な評価に晒すと、「希望」「意欲」「自己肯定感」が低いのを特徴とする。しかし、「社会のために役立つことをしたい」という項目では8割の若者がそれを支持し、「社会貢献意識」の若者の上がり幅はどの世代よりも高い。「今の若者は社会に無関心である」という指摘は当たらない。さらに、「自国のために役に立つようなことをしたい」という項目では、比較対象となった米英仏独スウェーデン、韓国などの中で1位であり、人の役に立つことで自己肯定感を掴みたい若者の気持ちを伺わせる。「自分は役に立たないと強く感じるか」との質問にも、「そうは思わない」と答えた日本の若者の割合は、アメリカのそれと並び、世界的に見て決して低いわけではない。
ただ、「社会現象が変えられるかもしれない」という項目では、7ヵ国中最下位であり、自分の力では社会現象を変えることはできないと思っている。人の役に立ちたいが、立てない自分がもどかしく、それが自己肯定感を下げる結果になっている。
心理学の研究では、人に「親切」にすると、自分のなかで自己肯定感が高まり、自分のことを愛せる人間になるとされている。他人のために自分が「犠牲」になって貢献しようとしている行為そのものが、「自分が意味ある人間であること」、「価値ある人間であること」を認識させるからである。日本の若者の場合、特にこれが顕著なようで、「自分は役に立つ」と思うほど、「自分自身に満足」する傾向が強く、それが自己肯定感となって現れている。この両者に相関があるのは日本だけの特徴であった。
今、大学は学生を坐学から解放し、社会の役に立てるよう学びの場を地域に移しているが、これは若者の自己肯定感を引き上げる上で打って付けかもしれない。
今、自分の研究を脇に置き、若者の意識と行動について調べている。研究を脇に置くと言っても、人事管理論を教える身故に、全く無関係というわけではない。管理の対象としての対象把握は必要だからである。
さて、今の若者を調べて、面白いなぁと思ったことは、日本の将来に希望を持てず、不安視するものの、またそれに重ね合わせるかのように、自分の将来を不安視しているが、それでも、7割の若者は「現在の生活」には満足しているということである。詳細な説明はここでは省くが、「好きな家族や恋人、友人がいるから」ということであった。その他世代と比べても、また団塊の世代が若者であった時と比べても、現在の生活に満足している若者の割合は高い。その将来を憂うも、身近な人との付き合い、いうなれば「つながり実感」が現在の若者にとっての最大の満足要因となりえている。
しかも、そうしたつながり実感を抱けている若者は、将来に対しても高い希望を抱けていた。若者の人間関係の希薄化が叫ばれて久しいが、それとは異なる状況が手元のデータからは見られる。親友の数でも、かつてのそれと何ら変わることなく、ただ情報機器の発達により、付き合い方が変わっただけである。むしろそれら機器は対面とは異なり、自己開示を容易にするものだけに今の若者はもっと深いところで繋がっているかもしれない。
日本の若者を国際な評価に晒すと、「希望」「意欲」「自己肯定感」が低いのを特徴とする。しかし、「社会のために役立つことをしたい」という項目では8割の若者がそれを支持し、「社会貢献意識」の若者の上がり幅はどの世代よりも高い。「今の若者は社会に無関心である」という指摘は当たらない。さらに、「自国のために役に立つようなことをしたい」という項目では、比較対象となった米英仏独スウェーデン、韓国などの中で1位であり、人の役に立つことで自己肯定感を掴みたい若者の気持ちを伺わせる。「自分は役に立たないと強く感じるか」との質問にも、「そうは思わない」と答えた日本の若者の割合は、アメリカのそれと並び、世界的に見て決して低いわけではない。
ただ、「社会現象が変えられるかもしれない」という項目では、7ヵ国中最下位であり、自分の力では社会現象を変えることはできないと思っている。人の役に立ちたいが、立てない自分がもどかしく、それが自己肯定感を下げる結果になっている。
心理学の研究では、人に「親切」にすると、自分のなかで自己肯定感が高まり、自分のことを愛せる人間になるとされている。他人のために自分が「犠牲」になって貢献しようとしている行為そのものが、「自分が意味ある人間であること」、「価値ある人間であること」を認識させるからである。日本の若者の場合、特にこれが顕著なようで、「自分は役に立つ」と思うほど、「自分自身に満足」する傾向が強く、それが自己肯定感となって現れている。この両者に相関があるのは日本だけの特徴であった。
今、大学は学生を坐学から解放し、社会の役に立てるよう学びの場を地域に移しているが、これは若者の自己肯定感を引き上げる上で打って付けかもしれない。