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通信49 経営学と心理学のちょっとした関わり合い


静岡産業大学経営学部教授 杉山 三七男
E-mail : sugiyama@ssu.ac.jp
 私の専門領域は経営学です。中でも人間関係論と呼ばれているところです。経営学は雑食的でして、使える学問領域は何でも使います。そこで、人間関係論も多くの学問領域に関わっていますが、その一つが心理学です。
たとえばカウンセリング。心理学者のカール・ロジャースは、その起源の一つに経営学を挙げています。それが、ハーバード・ビジネス・スクールで生まれた人間関係論です。ハーバードにホステス・ハウスと呼ばれるところがあり、精神的に疲れた学生が先生に行くように言われてやってくるのです。そして、そこで悩みや愚痴を聞いてもらうのです。ある時、そこを訪れたことのある学生が優秀な成績で卒業しました。そのことを知った学部長は、その活動を価値あるものとして常設のものにしました。これが、ハーバード大学のカウンセリング・ルームの始まりです。そして、そこで使用されていた傾聴の方法が、有名なホーソン調査の面接方法として活用されることになるのです。当時はまだ、経営学ではカウンセリングという用語は流布しておらず、面接と呼ばれていました。
カウンセリング・ルームに来る学生は、心が疲れていたり、心に傷を負ったりしている人々です。この概念は、心理学者のジャネが示したものだと思います。ジャネは、シャルコーの弟子です。年齢的にはフロイトより若いのですが、シャルコーの弟子としては先輩であったと思います。興味深いのは、ジャネとフロイトが、シャルコーの弟子として同じような症例を目にして理論を展開したと思われることです。ジャネは、博物学的に事例を集めて分類し、心理学的現象の階層を示してきます。それに対してフロイトは、症例の原因を追究しました。特に性的な原因を問題にしています。
そこで人間関係論です。人間関係論は、フロイトの理論が現実の普通の人間には適用できないとして活用しませんでした。ただし、過去の経験が現在の行動に影響するという点においてのみ活用しました。そして、ジャネが問題にした強迫観念に注目したのです。カウンセリング・ルームに来る学生だけでなく、多くの管理者や経営者が、この強迫観念に悩まされている。その結果として現実を冷静に認識することができなくなり、誤った認識をする。そしてそれは、誤った決定を導く。同時に、会話も途絶えてしまいます。人間関係論は、こうした状況に対処しようとしたのです。